このブログはアフリエイト広告を利用しています
【「評価と贈与の経済学」内田樹/著 岡田斗司夫FREEex/著 徳間書店】
読んでない、と思って買った本が、よく見たら本棚にあった。という経験は、本好きの人の中ではあるあるであるはずである。あるある。
先日、岡田斗司夫さんの本を何か読みたいなあと思って、カタカタと検索していたら、内田樹先生との対談本が出版されていることを知った。
なんと!知らなかった!これは買わねば!と注文してすぐに部屋の本棚で発見。
あれ・・・そこにいらっしゃったんですか。
おそらくむかし、内田先生の本が出れば買いあさっていた時に手に入れたのだろう。ただ当時はまだ岡田斗司夫さんをよく知らなかったので若干興味が薄らぎ、
そして「評価と贈与の経済学」というタイトルを改めて確認して、おびえたのではないかと推測される。
評価、の意味はわかる。贈与、の意味もわかる。
ただそれのしっぽに「経済学」がつくともういけない。
勉強嫌いな学生が教科書を見たときみたいな気持ち(読む気ゼロ)になって、そのまま無意識に本棚へ・・、ということだったのではないだろうか。
探していたものが実はすぐそばにあったなんて、まるでメーテルリンクの青い鳥。よかったよかった。…ダブったけれども。
こういう時に「ダブって買っちゃったんで、返品してください」という方もいるけれども、私は自分のミスで買ったものは返品しないのがポリシーである。(高額じゃなかったら・・)。
チルチル、ミチルだって
最初から青い鳥に気づいてれば、旅に出なくてすんだじゃん。超メンドー!
なんて文句は言わなかったわけなので、わたくしも文句を言わずにとにかく本を拝読させていただくことに。
表紙には青い鳥ではなく、青いイワシが描かれている。実際に読んでみると対談形式だったためサクサクと読める。経済学という言葉におびえる必要はなかったようだ。
面白いおじさんたちが面白いことを話しているわけなので、読んでいるうちにテンションが上がってくる。早く次が読みたいので、お風呂の中でも仕事の休憩時間でも、車の信号待ちの時間でも(こら)読む。
面白かったところをピックアップして紹介しようと思うと全部載せないといけなくなるので、3点だけ。
①家族って、なんじゃろ。拡張型家族のすすめ。
家族とは何だろう、血縁でつながった家族だけが家族なのだろうか。血は水より濃ゆいって本当だろうか。私だってよい親に恵まれて育ちました。ありがたいことです。でもね、やたら家族のすばらしさをメディアが強調すればするほど、なんとなく私の中の天邪鬼が首をもたげるのだ。
「そんな、セ〇ス~イハウス~みたいな世界ばかりが家族なのかい? なんだい、そのふつうの家族という選民思想は。そういう世界から様々な事情で取りこぼされていく人たちについては、いったいどう考えているんだい?」みたいな。
血のつながり以外での共同体というのは幻想なのだろうか。そういうことを漠然と考えていた私には大変興味をそそられる事例が紹介されていた。
家族の構成要素が「相互扶助」にあるならば、その枠を血縁以外に広げていく拡大家族を社会の中で構築していくべきではないかという話の中で、内田先生が映画監督のジョン・ウォーターズの「ドリームチーム」を紹介する。
内田 彼のまわりにはいろいろな心の傷や障害を負った人が集まってきて、そういう人たちばかりで映画製作のチームを作っているんです。(中略)これも岡田さんがいうところの拡張型家族のひとつです。
(略)
傷ついて、苦しんで、だれにもその経験を語れずにいる人たちで共同体を作っていく。岡田 恋愛とか血縁で結ばれる家族よりも、そっちのほうがいいような気がしますね。やはり正式な家族だけではなく、拡張型家族を作る選択肢がもっとあるべきだと思います。
「評価と贈与の経済学」P99
家族ってなんじゃろ。既成の価値観を抵抗なく受け入れられて、それに合わせて生きることに迷うことなく全力を注げる普通の人。そういう〝普通の人〟になれない天邪鬼たちにとって、大変興味深い考えだと思う。
②人生は等価交換じゃない
努力と報酬は、物理的にも精神的にも等価交換があたりまえ。それについては誰も異論はないでしょ。そう信じている現代人たちに、おじさんたちからのアッパーカットが入ります。
内田 いましている努力に対して未来の報酬が約束されていた時代なんて、これまでだったなかったんだよ。だって、明治維新からあと、二十年おきに戦争してたんだぜ。「約束された未来」なんてあるはずないじゃない。(中略)努力と報酬が相関するというのは幻想なの。嘘なの。(中略)《相関》するときもあるかもしれないけど、それは例外。
岡田 努力と報酬って一致しないですよね。能力と報酬も一致しない。
内田 しない
岡田 学生にもさんざん言ってはじめて「報酬は運である」って少しわかってもらえる。運だからこそ、成功したら他人に回さないといけないわけですよね
「評価と贈与の経済学」P54
③等価交換じゃないなら、人生はなんなんだ・・? 贈与だ!
良きパッサーたれ。彼らはそう言う。
ここに自分が存在する。ということ自体が多くの有形無形の贈与の結果としてあるという意識。だからこそ、自分もまた誰かに何かに対しての良き送り手、良きパッサーにならなければならない。
みんな長いお箸を持っていて、自分の口に運ぶことは長すぎてできないけど、向こうにいる人には食べさせてあげられる。そうやって与えあっているのが天国です。という寓話を思いだす。
そんなこと言って、誰もくれなかったらどうするんだ。搾取されるだけじゃないか。騙されないぞ。俺は箸を折って短くして自分で食べるぜ!だれも信用できないからな!
そういう人に、大丈夫ですよ、はいどうぞ。とあげることから始まる贈与の循環。
無条件に恩恵を受けたという思いが、握りしめた手を開かせ、次へとパスを送らせる。
岡田 生きる根拠がないと悩んでいる人は、他人に生きる根拠を与えることでしかその悩みは解消されない。
「評価と贈与の経済学」p116
「得た」ときよりも、「与えた」ときに感じる喜び。
ダブった本は、誰かに「贈与」せよ・・。
そうか、メッセージだっだのか。