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絵画にはトンと興味がなかったのだが、最近絵画関連ののYouTubeにはまっている。
山田五郎さんの「大人の教養講座」だ。
絵画の話というのは
感性のない人は、ちょっとあっちいっててくださる?
的な空気感を感じていて敬遠していたのだが(ひどい偏見)そんな人でも大丈夫。
なぜなら、そもそもこのチャンネルは「野球には詳しいが絵画はもとより歴史とかもトントさっぱり・・」
という若い女性ディレクター(ワダちゃん)にもわかるように説明しよう、というコンセプトで始まったものだからだ。
西洋絵画の中で馬に乗っている人はすべてナポレオンに見え、あろうことかあの世紀の大悪党ヒトラーを知らないという、つわもののワダちゃん。
その彼女と一緒に五郎さんの説明を聞くのだが、これが本当に楽しい。
圧倒的な知識を楽しそうに話す山田五郎さんと
天才的ボケ役でありながら、コメントのはしばしで人柄の良さがにじみでるワダちゃんの空気感と、そのやり取りに的確かつ冷静なテロップを出す(島崎さん?)のコンビネーションがバツグンで、
そのうえ絵画の知識が付くという、なんとも贅沢なチャンネルなのだ。
オキニシーン↓
大塩平八郎・・?w
さらに、楽器や美術作品で埋め尽くされた五郎さんの事務所の背景が、またおしゃれ。
住みたいなあ・・この部屋w。
絵画そのものの技法などよりも、画家自身の人生ドラマや、その絵が描かれた(裏)事情など、
誤解を恐れずにいえば、絵画にまつわるゴシップを中心に聞くことができるので、絵画に興味があまりない人でも楽しめる。
人としてアレな人たちが多い天才画家たちの人間の業の深さを知ると、ぐっとその絵に親しみがわいてくるのだ。
いきなり作品をみせられて「何かを感じよと」言われても困惑するばかり・・という私のような凡人にとっては、絵画に近づくための足掛かりとして、大変ありがたいチャンネルなのである。
(しかし、その後ワダさんは卒業されてしまった・・かなしい・・・)
文豪だって、人間だもの。
そして思った。
これは、文豪の作品でもいえるかもしれない、と。
高校の夏休みの読書感想文の推薦図書に、必ず入っているといっても過言ではない夏目漱石の「こころ」。
同じ家に下宿している「先生」と子供のころからの友人K。あるとき「先生」はKから、下宿先のお嬢さんが好きだから応援してくれとたのまれる。先生はガッテンショウチと引き受けはしたのだが、実は「先生」もお嬢さんが好き。なのでKをだしぬいて結婚を申し込み、まんまと成就する。そのことを知ったKは数日後、自殺。Kの死により苦しみを抱えることとなった先生は、Kの影が重なる妻となった〝お嬢さん〟に心を開くこともできず、苦しみを打ち明けることもできないまま、最終的に明治天皇の崩御をきっかけに自殺を決意する。(ということを書いた手紙を、知り合った青年「私」に送る。)
正直思った。
・・・これ、どう感想を書けと・・ ?
「おともだちをうらぎったら、いけないとおもいます」て感じでいいのかな?
おそらく先生から鼻で笑われ、低い点をつけられ、ますます文学嫌いになっていくという無限列車にのるだけであろう。たすけて、煉獄さん。
文学というものも結局
感性のない人は、ちょっとあっちいっててくださる?
的なものなのだと、敬遠する人のほうが多いのではないだろうか。
(それにしても、ヒドイあらすじ紹介で申し訳ない・・。最近で一番面白かった「こころ」の解説のこちらを、お口直しにどうぞ。👇)
文豪の作品を真正面から四つに組もうとして、土俵から転げ落ちてしまいがちな(私のような)人には、まず、その文豪がどんな人だったのか、どんな人が周りにいて、どんな日常を送っていたのかを知ることから始めてもよいのかもしれない。
文豪自身が身近な人物に感じられるようになってから、本丸の作品にのぞんでもいいんじゃないか。
ということで、紹介する本はこちら。
【 香日ゆら著 「先生と僕 夏目漱石を囲む人々 青春篇 作家篇」 河出書房新社 】
夏目漱石というと、なんとなく憂うつ症で胃が痛そうな人、というイメージだが、
実はマグネティックアイズといわれるほどの眼力があり、人を引き付ける魅力があったらしい。
それは、敵対的な気持ちできた新聞記者が、帰るころには漱石にゾッコンになってしまうほど。
目から何か光線が出ているのではないかとすら疑われているw。(「先生の目力」)
夏目先生を取り囲む登場人物たちは、
正岡子規、寺田寅彦、内田百閒、中勘助、高浜虚子、芥川龍之介、和辻哲郎など、
日本文学に少しでも興味がある人なら、聞いたことあるあるの有名人ばかり。
二回しか会ってないけど森鴎外も同時代の人物として登場する。
天才画家たちも自由奇天烈な人物たちが多いが、
漱石を慕う文壇の人々もやはり、個性的な面々ばかり。
整理を頼まれた漱石の本をこっそり売り飛ばす借金王、内田百閒。「内田の整理術」
平塚らいてうと心中事件を起こしたりと、破天荒で非社会的でかなりアレな森田草平。「先生の門下の異端者」
イケメンでモテモテで人妻キラーだが、実はロ〇コンの中勘助。「野上弥生子の恋」
※「中からの手紙」ではアブナイ手紙を幼女に送る中勘助。著者におまわりさん、呼ばれてます。笑)
でも先生を慕う気持ちはみな熱い。
弟子たちの間では「いったい誰が先生から一番愛されているか」が議論になるほど。
「まるで恋人にでも会いにいくような心持」で漱石のもとに通う寺田寅彦。「先生と寅彦」
漱石にドン引きされるほどの長文の熱い手紙を送る鈴木三重吉。「三重吉からの手紙」
妻あての遺書になぜか漱石への愛をしたためる芥川龍之介。「芥川の遺書」
そして漱石もそういう門下生たちを愛し返した。
幼少期にあまり家庭の愛情に恵まれなかった漱石は、人間不信、人間嫌いの側面もありながら、自分を慕ってくる者たちへはなんだかんだと世話を焼き、情に厚かった。
その時代にあってもまれな、特別な師弟の関係。
そのことを知った香日ゆらさんもまた、夏目漱石という人に魅了されていく。
つまり、この4コマ漫画は夏目漱石萌えとなった著者による押し活漫画である、と言い切っても過言ではない。(かもしれない)
人間夏目漱石と、漱石萌えの門下生たちの生態(?)を描いた文壇劇場。
読み物として楽しみながら、当時の文人たちのあれこれにも詳しくなれるという逸品。
これでもう、あなたも夏目漱石萌えとなること、まちがいなしだ。